駆け込み「ほとんど無し」
10月1日から消費税率10%に
マンション高値圏 じっくり選択か
10月1日から消費税率が10%に引き上げられる。
住宅ローン控除や住まい給付金の拡充、次世代住宅ポイント制度の創設など政府の駆け込み需要抑制とその後の反動減対策が早めに打たれたこともあって、住宅・不動産業界からは「駆け込みはほとんど見られなかった」との声が多く聞かれた。
マンション販売では大きな需要の変動は見られなかった--大方のマンション販売事業者側の見方だ。
早く新居に移りたい人、少しでも税負担を軽くしたい人、ローン条件が厳しくなる年配層などでは税率8%の時にという判断で購入した。
だが、条件的に増税後の方が実質的に得になると思われる共働き層などでは、年初から「落ち着いた構えでの住宅探し、急いだ風情はなかった」(マンション大手)という。
引き渡しが10月以降でも税率8%が適用される経過措置の期限である3月にも慌てた様子はあまり見られなかった。
すでに価格が高値圏に入り、一般需要者にとって手に届きにくい水準となったことも需要者にじっくり型の物件選択、購入行動を取らせている、という見方もあった。
引き渡しが9月末までに間に合う物件であっても、購入者側の住宅ローン決済が間に合わないなどの条件も加わり、事業者側が需要者の状況や動向を見極めて対応していたことも、「前回と引き上げ時とは比べられないほど、駆け込み需要が目立たない、穏やかな状況で消費増税の移行期を迎えた」という状況を後押ししたようだ。
この間、首都圏では「晴海フラッグ」など注目の大型物件も登場したが、入居予定は2023年。
高値圏となったマンション価格がどうなるのかを最も注視しているのが需要者。
五輪後の経済動向も含め、先行きを見極める時期と、消費税増税の時期が重なったことが、需要者の動きを慎重にさせ、駆け込みがあまり見られなかった要因の一つとも言えそうだ。
支援策で増税後にメリット
大手住宅メーカーは「4月以降も目立った反動減はなく、今後も大きな落ち込みはないと思われる。手厚い支援策が打たれており、増税後の購入メリットが大きい顧客もいる。増税の影響を受けにくい富裕層向けの商品をより充実させることで、さらなる受注増を図る」「今年4月以降の売り上げは、前年比では若干マイナスであるものの、前年が好調だったためだ。予断は許さないが、駆け込みや反動減による落ち込みといった体感は特にない」などと、各社ほぼ同様の状況。
「政府支援策の恩恵が少ない現金購入などシニア・富裕層による大型の高額帯に限れば3月までに契約したいという顧客が少なからずいた」と、限定的な駆け込みを指摘する声もある。
ただ「富裕層の反動減は多くないと考えられる」と、これまでの税率引き上げ時の動向から説明する。
アパート建築も支援の対象ではない。
「どのみち建築するなら契約は3月中という顧客がいた。アパート建築は節税を狙うならタイミング、資産運用ならば収益性と資金調達などと、さまざまな要素が絡み合う。前回のような駆け込みはなく、反動減も考えにくい」
仲介は影響せず
売買仲介はどうだろうか。
個人が売り主ならば原則として建物に消費税はかからず、課税対象は仲介手数料や融資事務手数料、司法書士報酬などだ。
売り主が事業者の場合は購入する建物にも課税される。
仲介大手やFC系各社に聞くと「8%引き上げ前には駆け込み的な動きが見られたが、今回はそのような感じではない」との見方が大半だ。
8%への引き上げ時には、購入者が個人間売買に消費税がかからないことを知らずに駆け込みが発生したようだが、理解は進んだかどうかは分からないとの回答が大半だった。
都内の地場業者は「売り主が個人だと非課税で、法人だと課税だと思っている顧客が多いが、個人・法人ではなく課税事業者か否かが分かれ目。個人からマンションの1室を自宅用に購入した場合でも、売り主が事業に使っていた場合には課税対象になる場合がある。しっかりと確認しないとトラブルになりかねない」と気を引き締める。
※週刊住宅タイムズ より